本編のエンディングと初期案について喋る

『噓つきな魔術師は恋をしない』本編ゲームをプレイしてくださった方、ありがとうございます!

https://novelgame.jp/games/show/10627

片貝さんに描いていただいた美麗イラスト&am42さんに作っていただいた素敵なロゴで作られたサムネイルの吸引力と、SNS やブログで紹介してくださった方々のおかげで多くの方の目に留めていただくことができました!!(他力本願すぎる)

また感想をくださった方、ノベコレで評価を付けてくださった方も本当に本当にありがとうございます……!


今日は本編のエンディングと初期案について喋ろうかなーと思いますので、ネタバレNGの方は読まないようにしてください。

エンディングについて

エンディング3→2→1の順に、私の感想とか、私がどう考えているかを喋ります。
一週間ずっと推敲してたんですが、あまりうまく纏められませんでした……。

なお私の脳内にはゲーム内に描写していないことが含まれているので、ゲームから読み取れないようなことも書いています。

エンディング3

エンディング3: 祈り

私はバッドエンドと呼んでいます。
自分のことを蔑ろにしてネージュの命だけ助けようとし続けるとたどり着きます。

やってみる前から『きっと無理だ』と無意識に諦めてしまうことってあります。
選択肢を無意識に排除して「こうするしかない」と思ってしまう。

ネージュさえ生きていればいい、わけがない。
それを知っていたのに、ユーグは本当の望みを無意識に視界から消し去り、ネージュの命を助けたいだけなんだと自分の気持ちを歪めてしまいました。

私はユーグを普通の人として書きたかったのですが、このエンディングのユーグはとても普通の人らしいと思います。

一方ネージュも、ユーグと共に生きる未来を最初から諦めていました。
更にユーグの説得を受けてもなお、長きに渡って諦念に支配されてしまっていたネージュは、生きるために積極的に行動することがありませんでした。

本来死ぬはずだった自分を生かすためにユーグが目覚めなくなってしまったことで、ネージュは後悔してもし足りないくらい後悔したと思います。

ネージュは今は望む未来を得ようと足掻いています。
ネージュが諦めない限り、ユーグはいつか目覚めるかもしれません。

バッドエンドではありますが希望はあるエンディングです。

エンディング2

エンディング2: 選択

私はノーマルエンドと呼んでいます。
このルートでの行動はネージュの気持ちをよく考えていて、私は一番ユーグらしいと思っています。

旅の間、ユーグにとってネージュはずっと「もうすぐ死んでしまう人」でした。
ネージュを生かしたいと漠然と考えてはいても、その先にあるネージュの人生までは想像していませんでした。

だから、命ある限り塔に閉じ込められて一生を過ごすと考えていたネージュがどんなに苦しかったのか、全く考えられていませんでした。
ネージュが死の運命を知らないことを理解してはいても、ネージュの立場に立って想像できてなかったんですよね。

ユーグはもちろん、助けたネージュが一生一人で過ごすなんて考えていなかったと思います。
だってネージュの今までの境遇はすべて大結界を張らせるためのことだと知っていたから。
結界を張った後ならネージュを閉じ込めておく理由なんて無いはずだから。

しかしユーグの考えは楽観的なもので、ネージュを解放する理由もまた教会には無いわけです。

もしもすべてを知ってしまったネージュが外で真実を話してしまったら、『大聖女』であるネージュの言葉は重く、重大な影響を及ぼすかもしれない。
――そう考えて教会はネージュを閉じ込め続けるかもしれない。

ネージュの命を守った先にネージュの幸せが無いのかもしれないと、ユーグはここに至って初めて認識します。

自分が与えた仮初の幸せがネージュから生きる気力を奪い、更に本当の意味ではネージュを救えないかもしれないと自覚して、これ以上少しでもネージュを苦しめる選択はできなくなった。
――というのが私の中では一番ユーグらしいので、これを最も到達しやすいエンディングにしました。

私はこれも愛だと思います。

片貝さんに描いていただいたイラストはどれも素晴らしいのですが、私はこのエンディングのイラストが特に気に入っています。
好きなエンディングです。

エンディング1

エンディング1: 未来

私はTRUEエンドと呼んでいます。これが正史扱いのエンディングです。
ネージュが死んでしまうのは絶対に嫌だし、自分もネージュと共に幸せになりたいという願いを諦めないとこのエンディングになります。

ユーグの本当の願いはネージュと共に幸せに生きることであり、ただネージュの命を救うことでも、ネージュをこれ以上苦しませないことでもない。
これは、ユーグがただ自分のために、『自分が望む未来を絶対に実現させる』という強い意志だけで我儘を押し通した結末です。

ユーグは何の力もない、教会の中で特別な地位も持っていない、ただ普通の魔術師です。
儀式の前にネージュと向き合った時点ではネージュの命を救うことさえ確実ではないし、救った後にネージュを解放することに関してははっきり言って無計画です。

何もかも不確かで、うまくいく保証なんか手に入らなくて、口にするすべてが無責任な理想論になってしまう。
「きっと無理だ」と言うネージュに説得力ある反論なんてできない。
それでもユーグがネージュとの未来を掴むには、理想を語り、それに向かって進み続けるしかないんだと思います。

ユーグの強い気持ちがネージュの心を動かし、未来を信じさせることができました。
実際には数か月で再会を果たせましたが、ネージュは何年でもユーグを信じて待ったことでしょう。

エンディングのイラストは正にハッピーエンドという感じでとても良かったですね。
実は私の脳内のネージュは笑うときも微笑むばかりで、満面の笑みを浮かべることがなかったのですが、このエンディングのイラストのラフが上がってきたとき「ネージュもこんな風に笑えるんだな」と思いました。

これからはネージュも少しずつ諦めることをやめ、幸せになっていくんだと思います。
二人に幸あれ。

初期案

2021年6月、制作を始めた当初に書いていたあらすじを公開しつつ色々喋ります。

初期案

■仮タイトル
この旅の終わりに君を殺す

■あらすじ
今代の聖女ネージュは18歳となり、慣例に従い各地へ赴き加護を授けることとなった。
若くして天才魔法使いと名高いユーグは、彼女の道中の護衛を任されることとなり、二人は短い旅に出る。
しかしユーグの本当の任務は、旅の間に彼女の魔力を分析すること。そして旅の終わりにネージュを生贄としてこの国の平和の基礎となる結界を張り直すことであった。

エンド1
ユーグはネージュに最後まで本当の任務を明かさず、彼女を生贄にして結界を張り直す。

エンド2
ユーグは彼女へ本当の任務を打ち明ける。
二人は逃げ出す。

エンド3
ユーグは彼女へ本当の任務を打ち明ける。
また彼女を生贄にしなくても、旅の途中でネージュが手に入れた聖遺物の力を使って結界を張れると言い、結界を張る場でそれを成功させる。


仮タイトルは話の要旨そのままですね。
ユーグはネージュのことを『君』とは呼ばないので変えました。
正式タイトルを決めるのは大層悩みまして、『噓つきな魔術師は恋をしない』に決めたときはまだ作中に『恋をしない』要素があったんですけど、その後私の技術不足で要素が削られていったので最終的に割とタイトル詐欺です。すみません。

最初は「聖女は 18 歳になると慣例で巡礼の旅に出る」という設定だったらしいですが、この設定は恐らく一瞬しか存在しませんでした。この設定で書いた記憶がないです。

当初のユーグは天才設定でしたが、その設定も早々に消えました。
「若いのに重要な任務を与えられている理由が必要」という考えから天才設定になっていたので、「若いほうが都合がいい」という設定を後から追加しています。

それと当初は「大結界を張るとネージュが死ぬ」ということしか決めてなかったので、ネージュは生贄ということになっていました。
結界の動力源として聖女が使われているイメージでいて、何らかの結晶体の中で祈り続けるネージュみたいなビジュアルイメージがありました。

また初期案の特徴として、ネージュが死ぬことになるという事実をネージュに話すかどうかをユーグ自身が選択していました。
これは書いている内に「強制的に言わされるほうがいいな」って思ったので変えました。

強制的に言わされるユーグを思いついたとき、自分のこと天才だと思いましたね。
私は最終的にハッピーエンドになる前提でユーグの顔を曇らせたいんですよ。

逃げ出すエンドは、シナリオを書きながら固まったネージュの性格では逃げ出そうとはしないと思ったので消しました。
誰にも言えない罪の意識に苛まれながら刹那的な快楽に身を委ねているユーグとネージュ、というのも良かったんですけど……。
他にハッピーエンドがある想定で、エンディングの一つとしてそういうのがあるのは好きです。

ちなみに当初案では結構ドラマチックに逃げてもらおうと思ってました。
ユーグが聖女の塔のセキュリティを突破してネージュの部屋の窓の外まで迎えに来て、そこから連れ出すとか。
大結界構築の儀式に向かう途中のネージュを拉致して空間転移で逃げるとか。
そういう逃げ出すシーン自体は未だに欲しいです。お姫様を救い出すヒーローみたいでかっこいい。

そして最初は何らかの特殊アイテムを使ってネージュを救う予定でした。
初期設定時の特殊アイテムである「聖遺物」は初代大聖女の骨で、それを聖女の代わりに結界の動力源に使うイメージだったと思います。

特殊アイテムを使う設定自体はかなり残ってて、途中で「聖遺物」が祈りの力を増幅させる触媒になったり、聖遺物ではなく聖祈力が固まった魔石で聖祈力を供給することになったりしました。
しかし結局最後は全面的に没になりました。

アイテムを手に入れる過程が、どうしてもシナリオ全体から浮いてしまったんですよね。
ご都合主義とはよく言いますが、都合のいい展開をスムーズに書くのも技量が必要なんだと思い知りました。

書き始める前に全部決めて書くということができなくて、フィーリングで書いたものを推敲し続けるスタイルで書いているので、初期に書いていた内容は概ねすべてが消え去りましたね……。

おわり