祈りの力とは何だったのか

ぼーっとしていたら一か月以上経過していました。
最近は Kindle Unlimited を契約して色々な本を読んでいます。

今日は『噓つきな魔術師は恋をしない』の「祈りの力」という設定について、私の最新の解釈を書きたくなったので書きます。

もちろん本編のネタバレが含まれますが、そろそろ隠さなくても大丈夫でしょう。ということで普通に書いていきます。

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祈りの力とは何なのか

作中では神様の力と言われていますが、実際のところは原理的に魔術と同じで、魔力を使って様々な現象を引き起こします。

祈りの力の行使には祈りの詞の詠唱が必要とされています。
しかし実は正しくありません。強く願うだけでも小規模な現象は引き起こすことが可能です。

というか、実は聖女ではない人も強く願うことによってごくごく小規模な現象を引き起こすことが可能です。
たとえば「無病息災のお守り」は実際に効果を発揮します。
真摯に願って渡した上で、受け取った人がその効果を信じれば、僅かに病気にかかりにくくなります。

なぜ祈りの詞や魔術陣などが存在するかというと、そのほうが効率よく安定しているからです。
「大地に恵みを与えたい!」とただ祈るより、大地に恵みを与える祈りの詞を詠唱するほうが集中しやすく、願いが分散しづらく、結果として狙った現象を発生させやすいです。
何もしないでぼーっとしているときに頭の中から邪念を排除するのって難しいですからね。

 

聖女とそれ以外の人でもっとも異なるのは、発動する現象の大きさです。
祈りの力は魔術では成し得ない大規模な結果を引き起こすことが可能です。

結果の大きさは取り扱える魔力量の差と、変換効率とも言うべきものの差に依存しています。

聖女は取り扱える魔力量が大きく、祈りの力は魔力を現象に変換する効率が魔術よりも優れています。
魔術師が何十人も束になれば原理的には聖女を超える結果を出すことが可能ですが、上手に魔力を制御するのが現実的に難しいため、魔術師は聖女に及びません。

 

聖女が多くの魔力を扱えるのは、聖女の特殊な体質によります。
祈りの力でも魔術でも「自分の魔力」を使う必要があるのですが、聖女は魔力を圧縮して体内にため込むことが可能な体質を有しています。
そのためいわゆる聖祈力は魔力に換算するとかなり膨大になり、大きな結果をもたらすことができます。
なお個人差はあり、大聖女になるのは特に魔力量が多い聖女になります。

 

変換効率に関しては、祈りの詞が魔術陣より優れています。
これはプログラム言語で言ったら C か Java かの違いみたいなものです。喋る言語が違います。

魔術陣は、誰でも簡単に取り扱えるようにする代わりに、魔力から現象に至るまでの変換回数が多いです。
変換するたびに魔力を消費しています。

祈りの力は変換回数が少なく、無駄に消費する魔力が少ないです。

祈りの詞と魔術陣、どちらを使えるかは完全に生まれ持った体質に依存していて、自分が使えないほうを後天的に会得することは不可能です。
祈りの詞はいわゆる聖祈力を持っている人間しか取り扱うことができません。

また、世の中には祈りの力も魔術も使えない人がいますが、彼らは実はまた別の言語を喋ることができます。
世に知られていないだけです。
もしかしたら「超能力」などと言われているかもしれません。

結界構築の祈りはどうやって練習しているのか

結界構築の祈りについて、最後まで詠唱できないのにどうやって練習しているのだろうか? というと、部分別に練習しています。
たとえば「大地に恵みを与える」「天候を安定させる」「魔力の流れを安定させる」みたいな、複数の効果が結界構築の祈りには含まれていて、一つ一つの祈りは個別に意味を持つので個別に練習できます。

ちなみに祈りの詞は決まった詠唱方法に従って唱えなければならないとされています。
でも、実際のところ詠唱の巧拙はどうでもいいです。
おざなりに唱えてもダメなのは事実ですが、大事なのは歌のような独特の節回しなどではなく、「大地に恵みを与えるのだ」という真剣な気持ちをもって大地に恵みを与える祈りの詞を詠唱することです。

この辺が魔術とは違うところです。
魔術のほうは、魔力の操作にある程度集中してさえいれば、望む結果について真剣に考えていなくても魔術が成功します。
魔術具を使えば集中すらほとんど不要になり、ユーグがネージュのことをぼーっと考えながら魔術を使ったって望む結果が得られるわけです。
(その代償に変換効率が下がっています。)

 

結界構築の祈りが必ずすべての聖祈力を消費するのは、「ここまでに唱えた全部の効果を有した可能な限り強固な結界を張る」みたいな内容の祈りになっているためだと考えられています。
「可能な限り強固な」という言葉の意味が曖昧なんですが、世界のシステム的には唱えている本人の生命維持は特に考慮しないようです。
もちろん人間本来の生存本能とぶつかり合ってしまうので、何の対策もしないと失敗します。

「死なない範囲で強固な」みたいな内容に変えれば何の対策もせずにそれなりの結界を張れそうな感じはしますが、祈りの詞を解明することができていないため無理です。
たぶん「死なない範囲で」みたいなフレーズが現存の祈りの詞には存在しておらず、見当もつかないのでしょう。

祈りの詞の定型フレーズ

祈りの詞は必ず “Fonn Vard toa QUAD rahca Neige” から始まります。

“Neige” の部分は聖女の名前が入るので、唱える人によって変わります。

祈りの詞の文法は詳細には解明できていませんが、頻出の用語はある程度解明できていて、大文字で記載される “QUAD” は「神様」、“toa” は「~へ」という意味の前置詞であろうと考えられています。

フレーズ全体の意味は「ネージュから神様へ祈りを捧げます」であろうと推測されています。

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おわり